「疲れたら休養をとる」「のどが渇いたら水を飲む」「準備運動をする」など、我々にとっては当たり前のことだけれども人間だからこそできることで、人間以外では自分でそれらをすることは難しいものです。
犬や猫ならば飼い主が様子の変化に気づいてあげられるかも知れないけれど、クルマの変化に気づくことができるドライバーは少ないことと思います。またクルマが我々に訴えかける情報だって、思ったよりも少なく感じられるものですからね。

正確に言うならば、クルマが訴えかけてくる情報は必ずしも少なくありません。それに対して気づいてあげられないのがほとんどで、ドライビングなどに夢中になるあまりにトラブルの原因を作ってしまうことだってあることでしょう。
人間と違って、クルマには欲求を伝えたり自己管理(修復)する機能が無いわけですから、誰かがきちんと面倒を見てあげる=整備(メンテナンス)をしてあげることが必要なのです。
index  スポーツドライビングのためのクーリング
 クーリングのメカニズムを考える?!
 クルマを傷めるドライビングとは?!
 「洗車は整備の基本」といわれる訳は?!
 幸か?!不幸か?!ワックスがけの必要性とは?
 
スポーツドライビングのためのクーリング
冷却水の温度を”低ければそれでいい!!”なんて考えている方も少なくないようですが、確かに水温が低いほうがいろいろとメリットが多いことは事実です。しかしながら、クルマというのは「クルマは走行している状態のときに、最良の状態になるように作られている」わけですから、エンジンの温度もそれなりに設定された温度があるわけです。
クルマを傷めるドライビングとは?!の項で説明したように、金属の熱膨張を考慮してクリアランスを設けてあるので水温が低い(エンジンが冷えている状態)での高負荷運転はエンジンにダメージを与えてしまいます。ですから、水温がある程度(70〜80℃を目安)上がってくるまでは無理なドライビングは控えるべきですね。とは言っても、水温だけが上がっていれば良いわけではありませんので、油温・油圧がある程度の数値を指すまでは注意が必要です。

ラジエターのもつ性能をフルに発揮して水温管理するには、維持管理しようとする温度域がポイントとなります。理想的には80〜90℃で維持できれば良いのですが、一般道での通常使用時でさえも80〜90℃で維持するのは容易ではありませんから、スポーツドライビング・モードに入ってしまうとさらに難しくなります。
いくら大容量のラジエターに交換して放熱量がアップしていたしたとしても、通常では100℃程度で作動する電動ファンのお世話にならなくても良いというレベルにはなりません。なぜならば、電動ファンが作動し終わってもまだまだ90℃を超えているわけですから、ほとんどの場合また水温がじりじりと上がり始めることでしょう。
ラジエターに絶対的な放熱力があるのであれば空気の流れを改善するのもひとつの方法ですが、電動ファンを上手に利用して水温をコントロールすることも可能です。そのために必要なことが、電動ファンの作動温度を下げることです。チューニングパーツとして売っている製品では電気的に作動温度を変えるものもあるようですが、私の考えた方法はラジエターのロアタンクについている電動ファンのスイッチである「サーモスイッチ」をアッパータンク側に移動させる方法です。これならばコストが安くて済むことと、確実に10℃程度は作動温度が下げられますから90℃くらいで電動ファンがまわるようになり、温度設定的には理想に近づくというわけです。

次に「サーモスタット」の作動温度に注目します。ノーマルでは76〜77℃で開き始めるわけですが、問題なのは全開温度の方で、なんと“87.5℃”なのです。これではせっかく電動ファンの作動温度を下げていても、通常使用時ならば問題なく対応できていても、スポーツドライビングを楽しむ場合には“つらい”ものがあります。
そこで登場するのが「スポーツサーモスタット」で、俗に言う「ローテンプサーモスタット」と呼ばれるパーツです。このパーツを使用すると81℃(うちの製品の場合)で全開になりますので、先に述べた80〜90℃での管理がずっと楽になります。これで、さらに理想の維持管理状態に一歩近づくことになると思いますよ。

忘れてはいけないのが油温管理で、いくら水温上昇を効率よく抑えても油音が上がればそれにつられて水温も上がることになります。逆に言うならば油温上昇さえ抑えることができれば水温も抑えられることになるのですが、油温管理は非常に難しくオイルクーラー等が備えられていない一般のクルマでは“冷却水”と“エンジンルームの排熱”でコントロールしかありません。
しかしながら水温を1℃下げることよりも油温を1℃下げることの方が難しいので、「水冷式オイルクーラー」などを併用してバランス良くコントロールすることが大切であり、理想的だと考えます。サーキット走行などのある程度スピード(走行風)を維持できる使用においては「空冷式オイルクーラー」の方が良い場合もありますが、ストリートユースをメインにした場合は水冷式の方がおすすめできます。
また空冷式のオイルクーラーを効率よく使うためには、シュラウド(導風板)等を作ってより効率よく冷却させることとともに、専用のサーモスタットを追加して適切な油温管理することが大切だと思います。

さらに忘れてはいけないのがエンジンルームの排熱(クーリング)ですが、空気の流れを利用して行うわけですから、“入るところ”と“出るところ”をきちんと作っておくことが必要です。私のビートのようにリヤバンパーを短く切ってしまうのもひとつの方法で、かつてWRC(世界ラリー選手権)のミッドシップ全盛の時代にはこんなスタイルのクルマが多く見られたものです。デザインは別として非常に簡単かつ効率の良い方法ですから、DIY派の方には良いかと思います。
またショップから販売されている“排熱ダクト付きトランクフード”も効果が高いのですが、空気をエンジンルームに導くことも大切ですから「クールインテークダクト」や「クールアンダーインテーク」をぜひ利用していただきたいと思います。[2004.6.13]
クーリングのメカニズムを考える!?
「夏に弱い」なんて言われているビートですが、毎年やってくる“暑さ”に備えて「心の準備」だけじゃなく、「オーバーヒート対策」も忘れずにしたいですね。

クーリングの要と言えば「ラジエター」ですが、オーバーヒートするからってラジエターを変えていたのでは出費が大きくてたまったものじゃないですし、変えても何かが変わるわけではないので面白みも少ないですよね。
カスタマイズには違いがないけれども、“メンテナンス・ケア”の延長線上にあるパーツ交換になってしまうので、安心感を得られることにはなりますが(とても大切なことですが)変化が体感しづらいのはちょっと残念ですよね。

ここで自動車の常識「水冷式」エンジンについて、少し学んでいきましょう。

エンジンの冷却には「空冷式」と「水冷式」があり、それぞれの特徴を活かして採用されています。
以前のポルシェやオートバイなどが採用しているのが「空冷式」で、走行によって起こる風を利用して冷却するシステムですが、何よりも“軽く作れる”ことと“構造が簡単”なことが長所です。もう一方の「水冷式」は高性能エンジンには必要不可欠であり自動車の常識となっていますが、冷却状態を安定させることができることが最大の長所です。冷却システムを簡単に言えばエンジンに“水”を循環させることにより冷却するもので、当然のことながら冷却の媒体として使用する水もきちんと管理(冷却)することでエンジンの状態を管理しています。
その「水冷式」エンジンの冷却水はどのように循環しているのか?おわかりでしょうか。
スタート地点をエンジンとして考えてみると・・・、エンジン冷却に使用して熱くなった水はラジエターに送られます。たいていの場合はエンジンの上のほうに“アウトレット”があり、そこがエンジンからの冷却水の出口になります。(たいていは、水温計が取り付けられています)エンジンから出た熱水は耐圧ホースの中を通ってラジエターの上側のタンク内に入り、冷却を担当する“コア”を通ることで走行風やファンによって熱を奪われて冷却されて下側のタンク内に移動し、さっきとは別の耐圧ホースの中を通ってエンジンに戻ります。
その戻るべき場所がエンジンの比較的下の方にある“ウォータポンプ”です。このポンプに戻ることで、再び水に圧力(流れ)を与えられてエンジン内を動き始めることができるわけですね。
ということは、ラジエター側からみるとエンジンに“冷えた水を吸い込まれている”ことになります。

よく耳にするパーツに「サーモスタット」がありますが、これはウォータポンプの直前についているパーツで、サーモスタットが作動していない(水温が低くて開弁していない)時は、実はラジエターからエンジン側への水は動かないのです。
でも、ウォータポンプはクランクシャフトの回転で常時動いていますから、サーモスタットが作動していない間も水を循環させなければなりませんよね。その予備ともいえる循環経路が“ヒーターユニット”なんです。
サーモスタットが作動するまでの間は、ラジエターを通さずにヒーターユニットだけを通って水を循環させています。だから、寒い冬に長い時間待たなくても水温が早めに上がってくれる、ということになるのです。ちなみに、自分たちが早く温まろうと思ってヒーターファンのスイッチを入れてしまうと、ヒーターユニット自体がラジエターと同じ働きをして、ちっとも暖かくならない・・・なんてことにもなりかねませんので、ご注意ください。
ちなみに「ローテンプ・サーモスタット」というパーツは、サーモスタットの作動(開弁)温度を通常よりも10℃程度ひくく設定したものですが、さらに流水量を増したタイプもあるようなので、すぐに水温が上がってしまうビートにはありがたいパーツと言えるでしょう。

さて、ここで問題なのはヒーターユニットに入っていく水はどこを通っていくのか!?で、たいていは冷却水と同じ水路を通っているのですが、途中で“エスケープ”しちゃうんです。ビートの場合は、エンジンから耐圧ホースなどを通ってラジエターへ向かう途中の“ラジエターの直前”で分岐してヒーターユニットを通り、専用の水路を通ってサーモスタットのない口からウォータポンプに戻ることができるのです。

ここで気付いた方もいると思いますが、“ヒーターユニットに入ってしまった水は冷やされること無くエンジンに戻される”ということになるのです。特に真夏の暑い日にヒーターをかける方はいないでしょうから、まったくの高温を維持したままエンジンに帰っていってしまうのです。これは、ちょっと気になるところですよね。
よく言われることに「オーバーヒートしたら、ヒーターをつければいい!!」というのは、このためだったのです。
できることならば、このヒーターラインにも小型のラジエター等(ヒーター同様にスイッチで任意に冷却ファンがまわるだけでOKです)を装着できたとしたら水温コントロールが楽になることでしょう。特にホンダ純正の「水冷式オイルクーラー・ユニット」はこのラインの水でオイルを冷やしていますから、こうすることでより有効に活用できることと思います。
とは言うものの、オールシーズンでの使用がストリートでの条件?!!となりますから、暑い夏場の使用だけでなく寒い冬場のことも考えないわけにはいきません。
このあたりが難しいというか、面倒というか・・・考えさせられます。

もっとも有効な『水温コントロールの方法』は、冷却効率を上げる(ラジエターによる冷却効率アップなど)とともに、エンジン自体が熱くなりすぎないようにすること(油温管理は必要不可欠!!)ですから、エンジンのセッティングだけでなくエンジンルーム内の廃熱にも注意したいものです。[2004.2.20]
クルマを傷めるドライビングとは!?
毎日の足代わりにも「自分の愛車」を使うことができるというのは、ある意味で幸せなことだと思います。しかしながら、毎日運転をしているなかで、知らず知らずのうちにクルマにダメージを与えていることもありますから注意は必要です。
いまどきのクルマは多少手荒く取り扱ってもノントラブルで100,000km以上走れることが当たり前になってきており、整備の大切さや必要性を忘れつつあります。毎日使うクルマだからこそ“ちゃんと様子を見てあげる”と同時に、“クルマに負担をかけるようなことはしない”ことを実践して欲しいと思います。

クルマで出かけるとき(特に朝一番の使用)にエンジンをかけたらスグに発進するような運転をするような方がいますが、これは良くないですね。「クルマは走行している状態のときに、最良の状態になるように作られている」と言われますが、特に作動部分の多いエンジンはピストン-シリンダ・クランク-メタルなどの摺動部分では金属の熱膨張を考慮してクリアランスを設けてありますが、これらは温まっときに適正サイズになるように設計されているので冷えたままの状態での高負荷運転はもってのほかなのです。
また水温計の針が動き出すまで暖機運転をする方もいますが、アイドリング状態で放っておくことはエンジンにとってストレスをかけることになるばかりでなく、地球環境にも良くないので「エンジンが少し温まるまで待つ」程度でよいと考えます。時間にして5〜10分と言ったところですね。その間に体操(準備運動?!)やクルマのチェックをしておけばいいんじゃないでしょうか。
暖気運転をする時間がないときでも、たった1〜2分で良いので出発を待ち、発進したあとはしばらく負荷を抑えて走行すればOKだと思いますよ。

ついついやってしまうことで注意しなければならないことの“例”として、次の内容が挙げられます。
  1. クルマを停止させた状態で、ハンドルを切り返すことは良くありません。アライメントのずれを発生させる原因になるだけでなく、パワステ車の場合は切り返しを多く行ったり、フルロック状態を長く続けているとオイルライン等に余計な負担がかかりトラブルの元になります。
  2. MT車のシフトノブに手をかけて運転をしているのも、あまり良くありません。触っている程度ならば問題はありませんが、少しでもストロークする方向に力がかかってしまうとギヤチェンジのメカニズムに負荷をかけることになる場合がありますので、注意が必要です。
  3. タイヤの空気圧を気にしないのも、良くありません。タイヤは命を乗せているとともに、ドライビングのポイントでもあります。たかが空気圧ですが、その空気圧次第でタイヤのグリップやコントロール性まで変わってしまうので注意することが必要です。ちなみにビート(超軽量車)の場合、太いタイヤを履く時はタイヤサイズの他に荷重設定を確認するようにし、どうしても荷重設定の高いタイヤを履く場合は少し空気圧を落とすことをおすすめします。
「洗車は整備の基本」と言われる訳は!?
以前に整備士をしていたころによく聞かされたのがこの言葉。
どうして洗車が整備の基本なのか?・・・初めはまったく理解できずに「ただ単に技術のない人間でもできることだから、やらされるんだ」と思い込んで我慢してやっていました。しかし、実はちゃんと理由があったんですよ。

洗車をするときにはボディに顔(目)を近づけて汚れをチェックしながら行うので、ボディの状態がよくわかるようになります。たとえば「こんなところに傷があったのか」とか「ここのボディラインは絶妙だな」とか、普段は気が付きにくいことでも気付くことができるのです。特にエンジンまわりの洗浄やその仕上げ(拭きあげ)はめんどくさいけれど、最も興味がわく箇所でもあります。
こうしてよく見ながら洗車をすることで、より確かな仕事ができるようになるとともに、作業の中での注意力を養うことができるのです。
冬場の洗車はとてもツラいけれども、愛車を目でチェックできる大事な時間なので、よ〜く観察しよう。新しい発見は時として残念なこともあるけれど、それでももっと自分の愛車のことが好きになれると思いますよ!

ちなみに毎日のように洗車することが好きな人がいますが、ボディのためには洗車後のケア(水をよく切って乾燥させたり、ワックスすること)を忘れずにしたいですね。
洗剤で洗ってすすぎが悪い場合には、結果的に洗うたびにボディを傷めてしまっていると思われますので、さらに注意をしましょう。
たいていのボディは鉄でできていますから「水」は大敵です。
幸か!?不幸か?! ワックスがけの必要性とは?
ホディにワックスをかけると美しい光沢が出るばかりではなく、ワックスによっては紫外線から塗装を保護し、さらに水をはじく(撥水する)ことで苦手な水分からボディを護ることができます。
特に紫外線は塗装皮膜を著しく劣化させる要素でありますから、保護するにこしたことはありません。ワックスがけはボディを保護するための最も手軽で優良な手段なんですね。

しかしながらワックスがけをすることのデメリットはないのかと言えば、残念ながらあります。まずは面倒くさいし、手間がかかるでしょ。まあ誰かにやってもらえれば良いのだけれどね。
さらにワックスがけを施したボディは、ワックスがけをしていないボディよりも汚れが目立ってしまうのです。これはワックスがけによる撥水により「雨水による自己洗浄作用」が失われてしまうからで、ボディ自体が撥水作用によって濡れなくなることで表面に付着した汚れが流れにくくなってしまうからなのです。
ホディのためのワックスがけではあるけれど、ワックスがかかっているからこそ汚れて見えてしまうことがあることも忘れてはいけません。

ちなみにワックスがけをしていないクルマは全体的にくすんでいき、部分的に汚れが著しく見えるようなことは極めて少ないので、汚れて見えにくいのです。またバーコード状態に汚れて見えるのは、実はワックスがけのせいなのです。
※大事な“相棒”であるクルマを、いつも輝かせてあげたいですよね。